Q.仮説検証を、どこまで自分たちの手でやり切ったか
ペルソナ・エンパシーマップ・カスタマージャーニー・リーンキャンバスを Figma で自作し、通算100人超のインタビューにかけた。旅行テーマは撤退したが、その判断に迷いはなかった。

前半 1 年は「旅行」をテーマに、リーンスタートアップの型を 実際に手で回す ことに徹しました。ペルソナ、エンパシーマップ、カスタマージャーニーマップ、リーンキャンバス — フレームワークを読むだけで終わらせず、自分たちのケースに落として作り、通算 100 人超のユーザーインタビュー にかけています。
こうしたフレームワークは、ネットのテンプレートを印刷して手書きで埋めるのが一番手っ取り早い。ただ自分は手書きが苦手で、デジタル上で完結させたかった。かといってスプレッドシートは、印刷や共有のときに「見やすさ」が犠牲になる。
そこで Figma のコンポーネント機能 で、フレームワークそのものをテンプレート化しました。
事業全体の仮説を整理する リーンキャンバス と、個々の仮説を実験で検証していく ジャベリンボード も同様にテンプレート化して使っていました。


まず空のテンプレートを用意しておき、インタビューで得た情報を流し込むと 1 枚のペルソナになる。下は左が自作テンプレート、右が流し込んだ例です(登場するのは実在の人物ではなく、架空の想定ユーザー)。


運用としては、ユーザーインタビューの後にチーム内で認識を揃えるため、対象者ごとにペルソナとエンパシーマップを起こしていました。


『ユーザーインタビューをはじめよう』を読み、書かれていた作法を実践しました。特に効いたのが 沈黙 — 「○○ですよね?」と確認して引き出すよりバイアスがかからず、黙っていると相手が自分から補足を足してくる。
本番の前に、チーム 3 人で互いにインタビューし合って練習しました。インタビュー役とインタビューされる役を両方経験できるのが良く、「こう聞かれるとこう感じる」という感覚を自分の体でも掴めます。練習後は改善点を文章にまとめてから本番に臨みました。
旅行テーマ特有の工夫として、旅行を想起させる写真カード も自作。今まさに旅行中の人にアポを取るのは難しく、対象はどうしても「旅行から時間が経った人」になりがちです。こちらのバイアスをかけすぎない範囲で当時を思い出してもらうために、写真を載せた小さなカードを見せる — という手法を本から採り入れました。カードに使う写真は自分が用意し、実際に手に取れる物理カードに仕立てる作業は他のメンバーが担当しています。


(a) 骨伝導イヤホン × 観光ガイド — 自分たちが骨伝導イヤホンを使いがち、という発想から入ったが、明らかにペイン発ではなくシーズ発。インタビューでも刺さらず、早期に撤退。
(b) 外国人観光客の荷物問題 — 最初の半年はアポなしで、外国人に人気の観光スポットに飛び込み、時間に余裕のありそうな人へ話しかけてインタビューするハードモードだった。ペインは実在するが、英語での意思疎通の難しさに加え、そもそも国内旅行者と課題に大きな差はないのでは、と国内へターゲットを切り替え。
(c) 国内旅行 → 実は「後片付け」が本丸 — カスタマージャーニーマップで分解すると、ペインは「用意」ではなく「洗濯と後片付け」だと判明。ただ解決策を詰めると IT ではなくコインランドリー的なローカル事業になり、「コインランドリーでよくない?」に着地。旅行テーマ自体を畳みました。


データ上は「ある程度ニーズはあるが想定を出ない」レベルで、決定打に欠ける。加えてチーム全員が自分ごと化できていないテーマだった、というのが撤退の根拠でした。
残念な結末ではあったけれど、チーム内で後悔や蒸し返しは一切なかった。自信を持って「別のテーマへ行こう」と話し合えたのは、道具を自分たちで作り、インタビューをきちんとやり切った上での判断だったから。撤退という判断を下せたこと自体が、この 1 年のリサーチの成果でした。
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